入門後、俺を含め、四人の同期がいた。
俺は、その中で上から二番目。
なのに、名前(芸名)が付くのが一番遅かった。
一年半かかった。
これは、相当長い。
もう、生涯名前が付かないンじゃないか、とさえ思った。
だから、師匠から
〝立川 志樓(シロウ)〟という名前を貰った時、
本当に嬉しかった。
四人の中で、一番カッコ良かったし。
二つ目になる時、師匠から
「名前はどうするンだ?」と、訊かれた。
〝志樓〟に殊更に愛着があった俺は、
「このままで行こうと思います」と、答えた。
ところが、
「それぁ、前座の名前だから、変えた方がいい」。
そこで、付けて頂いた名前が
〝立川 志遊〟
以来、もう十年になる。
最初の頃は、まだ〝志樓〟に未練があったが、
今は、もう〝立川志遊〟以外の何者でもない。
〝遊〟の一字を付けてくれたのは、
生真面目な俺に対する、師匠からの深い
メッセージではないか、と勝手に思っている。
この度、真打になるにあたり、
「名前は、このままで行こうと思います」と、
前回と全く同じ言葉を師匠に告げた。
返ってきたのは、
「そうしな。いい名前だ」
今日、橘右女次師匠から、
お願いしていた書き物が届く。
惚れ惚れする仕上がりだった。
『 寿 立川 志遊 』の文字を目の当たりにし、
改めて、いい名前をもらった、と思った。
666まで、あと121日。